#033 奈良いにしえ殺人絵巻

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 紹介

奈良春日大社が万燈籠で彩られた節分の夜、参拝者で混み合う境内から若い女性が蒸発した。一緒にいた友人・蔦沢智乃が警察に捜索願を出すが、行方は杳として知れなかった。同じ頃、吉野川ダムで身元不明の女性死体が上がる。また、彼女の住んでいた超高級マンションが勝手に処分され、銀行の貸金庫に預けてあった稀有の骨董『三十六歌仙絵巻』も何者かによって持ち出されていた・・・。警察庁遊撃捜査第七係・宮之原警部の追跡が始まった。

 目次

プロローグ
第一章  春日大社万燈籠の夜
第二章  吉野川源流のダム
第三章  日本の007
第四章  三十六歌仙絵巻
第五章  夕暮れの奈良公園
第六章  リゾート村の帝王
第七章  春日大社の森の闇
エピローグ

 主な登場人物

宮之原警部
蔦沢 智乃
川添 久美子
奈良県警吉野川署 桐畑巡査部長

 おすすめ

この頃の宮之原警部は、事件を探しに警視庁の捜査共助課へ顔を出しているようで、奈良で行方不明になった友人を探すヒロイン・智乃が、奈良県警吉野川署・桐畑巡査部長に伴われてそこを訪れたときに偶然居合わせます。警視庁共助課の課長さんにこんなふうに言われています<「全国の事件を自由に捜査できるのはいいが、自由となるとその分、事件を選ばなくてはならない。例えばあなたがいま捜査している大迫ダムの事件、そこへ首を突っ込まれると、吉野川署としては面白くないでしょう。かといって簡単な事件だと乗り出すまでもない。警部がここへおみえになるのは、事件を探しにみえるのだ。」>

このお話は、三十六歌仙絵巻という大変貴重な骨董美術品が登場します。このようなものやお金をめぐって殺人事件が起こるというものです。木谷先生は美術品や伝統工芸をテーマに盛り込んだ作品をよく書かれるのですが、このあとがきを読んでなるほどと思いました。そのあとがきから抜粋します。<僕の小説には、美術品や伝統工芸に関したことがよく出てくる。僕自身は伝統とか権威といったものを、それほどありがたいと思っているわけではないし、また、くわしいわけでもない。ただ、ピカソやゴッホが何十億という値段で落札されたというニュースを見ると、日本にだってそれに劣らない美術があるのだぞ、という身びいきな気持ちが起こり、意地になって日本のものを書きたくなるのだ。>

宮之原警部の愛らしいエピソードをひとつ。捜査も大詰めを迎えた最後の夜、宮之原警部と智乃が吉野の『入之波温泉 山鳩湯』という旅館で宿を取ります。旅館の主人に温泉に入ってください、湯舟のふちに溜まっている赤い泥を肌にこすりつけると肌がスベスベになりますと勧められ・・・<智乃は婦人風呂に入り、窓からトチの木の風呂を眺めた。宮之原がその湯舟に胸まで浸かり、せっせと湯垢のような赤い泥を掬っては、顔にこすりつけていた。事件も捜査もひと休み。いまは美容タイムといった感じだ。宮之原は泥を塗った顔を濁ったお湯で洗った。「警部さん、ハンサムになったわよ、ほんと」智乃のかけた声が谷間にこだました。宮之原は顔を智乃に向け、悪戯を見つけられた子供のように、くすぐったそうに微笑した。>

非常に残念なことですが、この本は絶版となっています。古本屋さんで探しましょう!

 参考リンク

美彩都・京都/まぼろしの国宝 佐竹本三十六歌仙絵巻  http://www.ex.biwa.ne.jp/~bisite/satake1.html
     佐竹本三十六歌仙絵巻の歌と解説を見ることができます。

奈良吉野 入之波温泉元湯 山鳩湯 http://www.yamabatoyu.yoshino.jp/
     宮之原警部と智乃が泊まった『入之波温泉 山鳩湯』のモデル(?)と思われる旅館です。 

 発刊履歴

イラスト(敬称略) デザイン(敬称略) 出版
野中 昇 一ノ瀬 和彦 1990/3 大陸書房

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