京都洛西、苔寺として知られる西芳寺の門前にある茶店の娘・秦春香(はたはるか)は、子犬の鳴き声が気になって外へ出た。竹林で鳴く子犬を追って行くと、そこに朱鷺色の着物を着た女性が死んでいた。子犬は春香が引き取りモクベエと名づけた。被害者の女性の身元は判明せず、目撃者もいないため、捜査は難航する。そんな時、茶店を通りかかった平瀬玻奈子は、警察庁の宮之原警部に相談するよう春香に勧め・・・
第一章 京都洛西・地蔵院の竹林
第二章 ライオンと闘った末裔
第三章 神戸三の宮・夜の応接室
第四章 太秦・消えた古文書
第五章 嵐山・結婚披露宴の夜
第六章 嵯峨野・念仏大狂言の仮面
宮之原警部
秦 春香
平瀬 玻奈子
銀行と建設業の深〜い結びつきと、宅地開発による自然破壊をテーマにしたお話。"開発か保存か"揺れる京都の事情がよくわかります。
春香 「南松尾山が開発されて、西芳寺川が氾濫すると、わたしの家、流されてしまうかもわからないんです。それを承知で遮二無二、開発させようとしている銀行の頭取に、ひと言、恨みを言ってあげたい。」
この作品ではメインテーマの他に興味深い点が二つあります。
一つ目は、木谷恭介さんご自身が経験された愛犬との暮らしについてが盛り込まれていること。作品中に登場する"モクベエ" は、種類こそ違うけれど、木谷家の愛犬と同じ名前だとか・・・。
春香が以前飼っていた臆病者のトンと、竹林で見つけたマスチフの血をひき子犬ながら王者の風格を持つモクベエ。ワンちゃんを育てるコツがたくさん出てきます。
宮之原: 「(前略)ひとりというのは気儘なものです。ときどき、ふっと淋しくなるときがあります。人間というのは面倒な動物で、自由気儘を望んでいるのだが、その一方で何かに拘束されていないと、ものたりないのかな」
春香: 「たよりにされているという実感がないと虚しいのやないですか。わたし、それでイヌが好きなんです。イヌにつくしてあげる。イヌもわたしを必要とするようになって、たよりにしてくれる。その関係が好きなんです。」
宮之原: 「そうかもしれない。人間は誰かの役に立っている。たえずそう確認してないと、生きていけないものらしいですね。」
春香: 「それに、つくしてあげるだけでは駄目なんです。甘えるようになりますし、イヌってこれで飼い主をなめるんですよ。」
宮之原: 「それは人間の親子も夫婦もおなじですね」
二つ目は、"秦氏" について。秦氏の有名人といえば聖徳太子の側近"秦河勝" でしょうか。作品の舞台・京都洛西が、秦氏がひらいた土地であったことや、ヒロイン秦春香のご先祖様という設定から、作品中随所に登場します。
京都じっくり観光/京都観光の楽しみ方・増幅サイト""http://www.kyotokanko.co.jp/
こちらに『歴史探訪・嵯峨野,太秦の知ってるつもり/第一回・古代豪族秦氏を訪ねて』 というページがあります。蚕の社,松尾大社,葛野(かどの)大堰 が紹介されていることから、作品中に書かれている<いまでいえばハイテク技術集団で、秦氏は機織り、酒造り、土木技術などにひいで・・・>というのが良く解かります。
イラスト(敬称略) デザイン(敬称略) 出版 坂本 勝彦 岸顯 樹郎 1994/11 双葉ノベルス 坂本 勝彦 中村 美樹 1997/4 双葉文庫 緒方 ユージ 池田 雄一 2002/4 徳間文庫
2003年11月10日
西芳寺方面へ『萩の茶屋』とモクベエを想う散策にでかけました。
この作品では”南松尾山が開発されたら・・・”という話になっていますが、石の標識のある四辻から見た”すごい竹林”の山は健在でしたので、あくまでもフィクションなのだと再確認しました。しかし、浄住寺の敷地に隣接した土地で10数戸の建売住宅が今まさに建設中だったのを見てドキっとしました。
季節まで『京都桂川〜』とほぼバッチリだったのに、紅葉は遅れてるわお天気悪くて(暗くて)竹林は不気味だわ・・・ちょっとついてなかったです。 苔寺へも鈴虫寺へも行かず、純粋に『京都桂川〜』の地を訪ねる散策になりましたが、静かでのんびり歩けて良かったです。
天気が悪くて写真が全体的に暗〜くなってしまいました。残念です。